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降って湧いたようなご縁 |
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約1ヶ月ほど前に九州方面のクリニックキャラバンを終えて帰りの道中に『東京試聴室へ伺いたいんですが』とK.Tさんという方から電話を頂戴しました。何でもB&W802が上手く鳴ってくれないという相談です。802なら当社はどこにも負けない実績を持っていますので、「静岡であれば帰り道ですし、クリニック方々立ち寄らせていただきましょうか?」と申し上げますと、是非ともという事になって急きょの訪問となりました。
その具体的な内容は特に802専用インシュレーター(RK-BW)に興味を持って下さっているみたいでした。部屋は8畳間で全くの正方形です。何の吸音対策もなくビンビンに高い所と低い所の2ヶ所に特定の周波数が際立った鳴り方をしております。それでもスピーカーの下に御影石を敷き、唯一の対応策としてキャスターにはくぼんだウッドブロックを巧みにかませてあります。これはグッドアイディアです。石と金属のぶつかり合いによって生じるヒステリックな音を緩和させる役割を担うので、だいぶん聴ける音になったそうです。
それでもこの方法は対症療法ですからあくまでグッド止まりではあります。こうした現状の音から、何をどうすれば頭の中に描く魅力ある音に仕立て上げられるのか?、説明しながらシュミレーションサウンドを体験して頂きます。充分ではないにせよある程度納得の上で、スピーカー用のインシュレーターとサウンドステーションの注文を頂きました。
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イザ納品 |
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5週間ほどの納期の後、改めて日帰りで納品に伺います。最初の仕事としてお客さんの目の前でサウンドステーションを組み上げるのですが、ネジ止め一つとっても、一般の人がやったのと私とでは腕による差が音に大きく出ます。もっともクリニックと共にセッティングの代金を頂いていますので当然と言えば当然の事ではあります。
次が本日の重要ポイントである802の専用インシュレーター(RK-BW)です。スピーカーを横に寝かして、キャスターの取り外し作業に入ろうと6角レンチを手にしたとたんに何か違和感を感じました。ネジの頭がいつもと違って菊ネジです。M4からM5ネジに変わったかと思うと今回はこの出来事です。現場では何が起こるか分りませんので、道具だけは不測の事態に備えて万全でなければなりません。道具箱にはたいていの事には対応出来るようにビッシリと詰め込んであります。
ボールキャスターを一通り外し終えたら、そのネジをチェックした上で音抜けが良くなるように加速度組み立てをします。その作業は後ろにぽっかりと空いたの二つの穴の鳴き止めの役割りも兼ねております。合計12ピースから成り立っているRK-BWを全ての相性を確認して並べ直し、さらに頭がトラス形状の音の良い黒色の6角ネジで、これまた加速度組み立てをします。これで完璧です。
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王道セッティングの始まり |
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サウンドステーションを大体位置決めし、その上にスピーカーを乗っける作業に入りますが、今までの経験上サウンドステーションの中央から前にかけて座布団を敷いておきます。その上にスピーカーの後ろ半分を乗せた状態で座布団ごと引っ張り上げるようにして乗せるのです。スピーカーの後ろを持ち上げた状態で座布団を抜き、後ろ1点支持になるようにPB-BIGを入れます。同じ要領で前を浮かして貰いBIGのオスをフロントに2ヶ所入れて完了です。
スピーカーがサウンドステーションの真ん中に来るようにカイザーゲージを使って丁寧に合わせ込みます。ここで書き忘れるところでした。実はこの時点で左右のスピーカー本体を入れ替えてあります。元の置き方では箱の響きの方向が外に広がらない状態にあったからなのです。
この先はワイヤリングについてのノウハウになるのですが、
K.Tさんは高域のターミナルと低域のターミナルにスピーカーケーブルをタスキ掛け結線しておりました。
当社のように高度なセッティングになってくると、
その方法では音のニジミが露呈されます。
もしもタスキ掛けで音が良くなるように感じるようでしたら、
貴方のシステムコンディションは低い状態にあると思って下さい。
どこかに音のピークがあると、
ずれる事が音のエネルギーを減じさすので一見聴き易くなるのです。
そのストレスが減った事が良くなったと勘違いする元であります。
この手法が多くなればなるほど音は萎え、
感動は貴方の手から遠く離れて行ってしまうのです。
アンプから来たスピーカーケーブルのY端子がネットワークに向かって内側に接しその上にジャンパーケーブルのY端子を載せるように結線するのがセオリーです。今日は低域側のターミナルに繋ぎます。訪問した先で無頓着にも左右で上下まちまちに差してあるのを意外とよく見かけます。この上下が逆になりますと余分なY端子を経てネットワーク回路に入りますので、エネルギーロスの原因となります。このような事がいくつか積み重なると、ボリューム調整をしなければならないほどのレベル差が左右間に生じてしまうのです。
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方向性とは魂に訴えかける力と直結 |
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また同じエネルギーロスでも、ニュアンスが異なるのが方向性による音の違いです。そのY端子の上下・裏表の方向まで管理して作られているとなると、世界広しと言えども現実にはローゼンクランツ以外にはないでしょう。
それらエネルギーロスや音圧の差だけならいいんですが、
この方向性というのは厄介なもので、
「魂に訴えかける力」と密接に関係していますから、
音楽として魅力を感じなくなってしまうのです。
同じ「ありがとう」の言葉でも心のこもったのと、
そうでないのとの差といえばいいでしょうか、
分ってください。
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気合の入ったセッティングの始まり |
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今日はセッティング担当の息子がいませんので、久し振りに私一人でのセッティングですから相当気合が入りました。私の頭の中では息子との腕の比較というか、年甲斐もなく意識しているのでした。
こうして音を聴いて頂きながら、カイザーゲージで少しずつ微調整します。
3ミリ、1ミリ、「これからツボに入る瞬間をお聞かせしますよ」と言って、
最後には0.3ミリぐらいの感覚で追い込みます。
「どうです?来ましたでしょう!」。
『うわっ!凄い!、来ましたよ!、来ました!』。
これで前後は完全に「カイザーウェーブ」に乗った状態です。
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フラッターエコーとカイザーウェーブの関係 |
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このページの最後のシステムの全景写真をよくご覧頂きたいのです。コンポの背中に当たる壁には何の音響対策もなされていません。これでフラッターエコーは皆無なんですが、信じて頂けますか?。そして驚いてはいけませんよ、この写真に写っていないリスナーの背後の壁も全く同じようにポスター一つ貼っていません。前後の壁面である、お互いが完全な平行面を持っているのです。
この最近では、「むしろ私は、平行面を持ってくれていた方が良いとさえ思えるように変わりつつあるぐらいなのです」。よく反射するという事は、それだけエネルギーの減じる量が少ない訳ですから、歓迎されるべき事だと。その余った力を再利用出来れば何も嫌う事ばかりではないと考えております。排気ガスを再利用する車のターボチャージャーのように。
日常の人の営みの中にそのヒントが隠れているように、反対意見を言ってくれるのは、こちらの為を思っていてくれるからこそと考えられないでしょうか?。何の意見も出ないほどに音を逃がしたり、拡散させたりを100対0を理想とするような全員一致を見る事のほうがむしろうそ臭いですね。全てを悪者としてとらえる考えの方が間違いでは?と思います。
オリジナルの第1波と、反射する波と、追っかける波の3者がハーモニーが減じない範囲の中で、2波が1波をほんの僅か譲りながら、第3波が1波の後押しを出来る状態が理想と考えております。
全ては耳で探し出すわけですが、その部屋に於けるスピーカーのベストポジションを見つける作業(カイザーウェーブに乗せる)というのは、私の場合無意識の内にこの状態を紡ぎ出しているように思うのです。
当然次はスピーカーの間隔を同じように追い込んで合わせます。
『ほぉ〜〜・・・、な・る・ほ・どネ』。
この2度目のピンポイント状態には冷静に反応するK.Tさん。
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フェーズプラグRK-PP Selectedの試聴 |
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ここらあたりが腕だけで音を良くする限界点と見た私は、
「そろそろ聴いてみたいと仰っていたフェーズプラグを取り付けてみましょうか?」。
『是非お願いします』。
ボーカルモノを好んで聴かれるK.Tさんにとって、
この音の違いにはいっぺんに惚れ込んだみたいです。
『まるっきり違います!』。
『声に命が宿ったとは、こういう事なんですね!』。
K.Tさんは、私と同じように人の声に敏感に反応するようです。
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「ナイアガラJr.」の試聴 |
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新品だったせいもあるのかもしれませんが、これはパッと聞きにはインパクトがなかったようです。しかし私の耳には根こそぎ基礎体力が上がったように聴こえるのは、どこでどのように音がこの後変化向上して行くのか体験済みだからです。K.Tさんには最後に外す時になったらその能力がいやというほど分るでしょう。
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PB-BOSSの試聴 |
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マランツのユニバーサルタイプのプレーヤーに最新型のインシュレーターPB-BOSSを入れての試聴になりました。これの効果にはビックリされたようです。喉元からしか声が出ていなかったのが下腹にぐっと力が入ったようにこちらに迫って来るように大化けしました。
強弱、抑揚といい、ブレスの生々しさなどは特筆に価するようです。
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スピーカーの問題点が露呈してきた |
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ここまであからさまにピントが合うと、スピーカーユニットの音圧レベル差や、パーツの集合体としてのスピーカーの誤差がハッキリと目に見えるように現れて来たのです。それは左のスピーカーが右チャンネルよりかなり大きく聞こえ始めました。そうでしょう、最初から最後までK.Tさんはスピーカーの真ん中に座って、音出ししながらのこの合わせ込みの作業を見守っているわけですから、ちょっとした変化でも聞き取れるような凄耳に進化成長しているのです。
先ず第一のその解決方法として試みてみようと思いついた事は、
右のスピーカーケーブルに2回転ループを付けて、
加速度によるエネルギーの増大を図ってやる事です。
「如何ですか?」。
『いや〜大分近づきました』。
『何を為さったんですか?』。
「スピーカーケーブルにループを付けてやったんですよ」。
『どれどれ、どういう風にですか?』。
『え〜、たったこれだけの事で、今のような変化をするんですか?』。
『てっきりケーブルは巻いてはいけないものと思っていました』。
「そうです、4パターンの内3パターンは駄目ですね」。
「今のこの巻き方しか駄目なんです」。
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ミッドレンジユニットの締め付けトルク調整 |
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もう一つこのエネルギー差を埋め合わせるのにどこを触って調整するかなんですが、即座に疑いをかけたくなったのが、ミッドレンジのハウジングキャビネットにユニットを引っ張り込む為の調整ネジの部分です。音圧の大きい左の方を僅かに半時計方向に7〜8分回します。
「如何ですか?」。
『はい、大分真中に寄って来ました』。
次は右をチェックします。回してみますと左に比べて緩めです。ですから今度は時計方向、すなわち締まる方向に10分ほど回します。ほぼ完璧に近い状態に入ったようですが、もう一つの感じです。
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ウーハーユニットの締め付けトルクの問題点 |
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もう一度改めて問題点を洗い出す為にウーハーとミッドレンジユニットの繋がりによるエネルギーバランスという観点から見ますと、左は上のウーハーユニットとミッドレンジユニットの繋がりが良いのですが、ウーハー同士の繋がりが良くありません。
右チャンネルはと言うと、それとは逆にミッドと上のウーハーユニットとの繋がりが良くないのです。これが左右の音圧差を生じさせていた一番の原因だという事が分りました。すなわち右のミッドレンジユニットはウーハーのエネルギーを上手く取り込めていないのです。
さりとて、ウーハーユニット同士の繋がりは良いものですから低音の感じは右チャンネルが良いのです。802に関しては今までに何機種も調整してきましたが、今日ほど音が目に見えた事はありません。それは珍しい事ではあるのですが、K.TさんのアンプとCDがどちらも一体型だからケーブル等の癖もその分少ないですし、音がシンプルで判断し易かったのです。
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その場で新しい提案 |
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スピーカーユニットに耳を近づけ鼓膜を通して脳とハートに入る音からして強固な確信を得た私は、左右のスピーカーの周波数エネルギーバランスを完璧に取る為の「加速度組み立て」の調整を別メニューで急きょお薦めしたのです。今日のような調整は初めてであり大出血サービスです。その内この調整技術もメニュー化して行くつもりではあります。
大きく深呼吸をして先ず左のスピーカーに戦いを挑みます。
一気に12個のネジを組み上げました。
「とりあえず左だけですけど、その効果のほどを確認してみて下さい」。
『いや〜、右から全く音が聴こえなくなりました』。
「そうでしょう、これだけ端に居ても分りますよ」。
「それではもう一度気合を入れ直し、右のスピーカーもやりましょう」。
「ふぅ〜〜・・・」。
「うっ、しまった、左と同じにしてしまった」。
3個目ぐらいで気がつきます、
途中で呼吸が乱れたのでもう一度深呼吸をし直し新たに初めからやり直しです。
「今度は上手く行きました」。
「もう大丈夫です」。
「音を出してみて下さい」。
プレイボタンを押したその瞬間に、
それは別世界のような音の花園が部屋一面に広がったのです。
20年前のケンウッドのアンプが鳴っている音とは誰が信じるでしょう。
K.Tさん曰く、『サウンドステーションを入れた時にもう既に今日は大満足でした』。
『あの時点で音から音楽に変わっていました』。
『信じられないような出来事が起きてしましました』。
『カイザーサウンドさんとお知り合いになれて本当に良かったです』。
『一度には買えませんが、今日聴かせて頂いたモノは全部買うつもりでいますが、
たちまち今日はフェーズプラグだけ頂戴いたします』。
『本当に有難う御座いました』。
その言葉を聞いた途端に、全身の力が抜けて行くのが分りました。
生殖行為を終えたサケのように精根を使い果たしました。
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T.Kです |
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----- Original Message -----
From:
"T.K"
To: <info@rosenkranz-jp.com>
Sent:
Sunday, July 11, 2004 4:24 PM
Subject: T.Kです。
貝崎様
納品していただいて一週間が経ちました。
施工当日、またお電話では大変お世話になりました。
我が家のN802はフェーズプラグRK-PPセレクティッドの一番先ッポからグイグイ音を出すようになってきました。片側4発ずつあるドライバーのエネルギーが揃っていることの素晴らしさを実感しています。大きなフルレンジユニットが誇らしげに朗々と歌っているようです。サウンドステーションとRK-BW、さらにRK-PPが部屋に馴染んできている証拠なのでしょうね?。
じつは、B&Wのスピーカーを手に入れてから『これが最高の音である』と、ずっと自分の気持ちを騙してきたように思います。デザインバランスが良くて分解能が高いために本質を見失っていたように思います。
今こうして音を音楽として聴けるようになったのは、貝崎さんと知り合えたことにほかなりません。子供の頃、親に初めて買ってもらったレコードプレーヤーから音が出てきた時と同じ感動を覚えます。これから先、まだまだ貝崎さんのアドバイスを受けるのが楽しみです。
今後とも宜しくお願い申し上げます。 T.K
P.S.
貝崎さんがオーディオ機器の前で集中しておられる姿は、
まるでオーケストラのコンダクターのようだと思いました。
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